バロック時代の楽器、チェンバロとハープシコード
チェンバロとハープシコード、どう違うのかという質問をよくみかけますが、結論からいうと同じ楽器です。チェンバロがドイツ語、ハープシコードが英語。ちなみにフランス語だとクラブサン。ピアノが出てくるまで全盛だった鍵盤楽器です。つまりバロック音楽全盛の時代、バッハの時代。
バロック様式という建築様式があります。円や楕円を多く用いたデザインで過剰なほどの豪華な装飾性を特徴としたもので、チェンバロもその時代に即した豪華なデザインのものが多いです。そこから見るとピアノのいかにシンプルな事か。
でも、このチェンバロの音色大好き。どう表現して良いのかわからないけど、カラダの中に一番響いてくる。
バロック音楽自体がもっとも好きな音楽だけど、その頃に使われた楽器、チェンバロの他にもパイプオルガンなど特徴的な楽器がたくさんありますが、それらの音色も凄く好き。そして管楽器、特に金管楽器と呼ばれる真ちゅうでつくられた楽器、トランペットやトロンボーン、ホルン、チューバなどの響き。これらのハーモニーも温かみのある心地よい響きです。
この楽器類の組み合わせで、自分にとってのゴールデンコンビがパイプオルガンとブラスアンサンブルで奏でるバロック音楽。これ最高!!
音楽の父といわれるバッハやヘンデルの時代の音楽がバロックと呼ばれますが、実は結構後期なんですね。最近は彼らより約一世紀前の時代の音楽、イタリアンバロックにもかなりはまっています。
それこそオルガンとブラスアンサンブルの組み合わせの曲などもあって、曲だけで一番を選ぶと今はこちらかな。
ピアノがチェンバロにとって変わるとき
話は戻りますが、チェンバロもしくはハープシコード、バロック時代にあれだけ全盛だったのに、なぜ使われなくなってしまったのか。
それがピアノの登場です。
バッハがまだ活躍していたその頃に、最初のピアノが生まれました。初期のピアノは、現在のピアノほど大きな音がでなかったことや新しい構造という事で改良の余地もたくさんあったり、他の楽器とのバランスもあってあまり普及していなかったようですが、徐々に改良されてコンサートなどでも充分なパフォーマンスを発揮できるようになると演奏家たちは徐々にピアノに移行していきます。
何故そうなったか。
理由は、ピアノの表現力の豊かさにあります。ピアノは鍵盤のタッチの強弱で音の大きさを繊細に変えてより細かな表現をつける事がでます。ところがチェンバロはキータッチの強弱では音の大きさを変えられません。
どういうことか。
チェンバロとピアノは、音を出す構造が全く違います。ピアノは、見たことある人も多いと思いますがハンマーで鍵盤を叩きます。その叩き加減は鍵盤のタッチの強弱で変わります。それに対して、チェンバロはプレクトラムと呼ばれる爪がジャックと呼ばれる縦向きのバーに付けられていて、鍵盤を押すとそのジャックが持ち上がってプレクトラムが弦を弾いて音を出すようになっています。だから構造上、強弱をつけられないのです。
ピアノが出てきてから、チェンバロも改良されて音の強弱を何段階かにつけられるシステムを搭載したり、鍵盤を2段にするなど段数を増やして音色や音の大きさの違う組み合わせをつくれるようにしましたが、時代は演奏者のより繊細な表現を求めていました。結果的にチェンバロはバロック音楽の衰退とともに消えていきます。
バロック音楽の復興
それでも近年、音楽が多様化してきてさまざまなジャンルの音楽が生まれ、また地域や思想による新しいジャンルができてくると、そういった旧来の音楽もひとつのジャンルとして選択のひとつになります。モーツァルトやベートーベンなどに代表される管弦楽は一般的にも広く知られていてファンもたくさんいます。でもバロック音楽はやはりマイナーですね。どっちかというとマニアックなほうでしょう。
でもそれに特化した楽団やグループが確実に存在します。ここバンクーバーでは、パシフィックバロックオーケストラ(PBO)と呼ばれるバッハはもとよりそれ以前、つまりバロックよりさらに古い時代の音楽(アーリーミュージックと呼ばれます)を演奏する団体があります。楽器も古楽器と呼ばれる、当時使われていた楽器を復元したものを使って演奏したりします。
そんな流れの中で、チェンバロが再び脚光を集めてきているのがうれしいところ。ちなみに日本の地元では、パイプオルガンやチェンバロ、リュート(バロック時代のギター)を作っている職人がいます。半分趣味ですね。一度お宅にお邪魔した事がありますが、自作のリュートが何本も壁にかけられていたり、チェンバロが一台部屋に置かれていたりして、いつでも演奏できるようになっています。楽しい時間と空間を味わえました。
PBOのシリーズもののコンサートはバッハだけでなく、さまざまなアーリーミュージックを演奏します。さらにうれしい事に、コンサートの始まる前にプリコンサートディスカッションといって、指揮を取るコンダクターと司会者との会談の時間があってオーディエンスが質問をできる時間があります。話を聞いていると、彼のアーリーミュージックに対する深い愛情と、大勢の人に知ってもらい興味をもってもらって大きく広めていこうという熱い思いがひしひしと伝わってきます。
バロック音楽大好きな自分としては、是非その夢を実現してほしい!!